ご夫婦の年齢や状況によっては、体外受精から始めることでスピーディーに妊娠という結果につながる場合があります。男性不妊症(乏精子症、精子無力症など)など何らかの原因で受精障害がある場合は、顕微授精をご提案いたします。当クリニックでは、治療の一つひとつの段階において患者様のご希望をお伺いし、治療を進めてまいります。
治療内容
体外受精-胚移植
採取した卵と精子を体外で受精させて(体外受精)、その受精卵を子宮内に戻す(胚移植)方法です。
1978年にイギリスで初めて成功し、現在日本では年間44万周期以上行われ、全出生児の5%近くが体外受精で生まれています。
- 人工授精(4~5回)を一定数試みたけれど妊娠できない(一般不妊治療からのステップアップ)
- 重度の男性不妊症など様々な要因により、体外受精でしか妊娠できない可能性が高いと判断される
- 原因不明不妊症
体外受精は、下記の流れで行われます。
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1調節卵巣刺激(COS)
調節卵巣刺激法で排卵誘発を行い、卵子を複数個育てます。当クリニックでは、下記3つの方法のいずれかで排卵誘発を行います。
注射による排卵誘発HMGという排卵誘発剤を毎日注射して、複数の卵を育てます。
- メリット
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一回の採卵で複数の胚を得られる可能性が高い
- デメリット
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卵巣刺激症候群が起こる可能性がある
低刺激周期月経3日目頃から排卵誘発剤のクロミッドなど(患者様によってはレトロゾール)を内服いただく、あるいは卵胞がある程度育った時点で排卵誘発剤HMGを数回注射して卵を育てます。
- メリット
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- 体への負担が少ない
- 卵巣過剰刺激症候群が起こりにくい
- デメリット
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採卵できる卵の個数が少ない
自然周期採卵ほとんど薬剤を使わない方法です。卵巣の反応性が極めて低い方、年齢が高い方などを対象としています。
- メリット
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- 副作用がほとんどない
- 安価である
- デメリット
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- 採卵個数が1個しかない
- 採卵手術がキャンセルになる可能性が比較的高い
どの方法が患者様に適しているかは、年齢や卵巣の反応性の予測(AMHの測定など)、患者様のご希望により判断します。注射はなるべく自己注射をご提案し、通院などのご負担を減らせるようにしています。
自己注射とは排卵誘発剤をご自身で注射いただく方法です。体外受精では多くの場合、看護師が打つ注射と同じように、患者さんご自身でアンプルから薬剤を注射器に吸い上げ、打っていただきます。方法は、医師または看護師が丁寧に説明いたしますので、ほとんどの方が対応いただけます。少数ですが、ゴナールエフというペン型の薬を使う方もいらっしゃいます。
症例によっては、自己注射ができない場合もあります。医師がご説明いたします。
自己注射のメリット -
2卵の採取・精子の準備
経腟超音波ガイド下で卵胞を確認しながら採卵します。採卵時には静脈麻酔を行います。症例や患者様のご希望に応じて局所麻酔の場合もあります。
採卵当日にマスターベーションで採取いただいた精子を、洗浄・濃縮します。 -
3体外受精・培養
精子と卵子をひとつの容器に入れて培養します。やがて受精が起こり、胚となります。胚はその後卵割(胚の細胞分裂)を繰り返しながら発育を続けます。
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4胚移植または全胚凍結
胚移植
受精から約3~5日目に、胚を子宮内に移植します。日本産科婦人科学会のガイドラインに従い、多胎妊娠のリスクを避けるために子宮内に移植する胚は原則1つとしています。患者様の年齢や、妊娠に至らなかったこれまでの胚移植の回数により、2個まで移植できる場合があります。ご希望がある場合は医師にご相談ください。
移植しなかった胚(余剰胚)は凍結保存し、次回以降の胚移植に使用することができます。
全胚凍結
卵巣刺激の影響で子宮の着床環境が整わない、あるいは卵巣過剰刺激症候群の発症などにより次回以降の周期で胚移植を行った方が良いと医師が診断した場合、採卵した周期での胚移植を行わず、すべての胚を凍結します。次回以降の周期にて、着床環境を整え、胚を解凍し移植します。
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5胚が発育する、黄体補充を行う
着床や妊娠の継続のために、黄体ホルモンの膣錠、膣ゼリーを採卵後からご自身で挿入いただきます。膣錠でかぶれるなどで使用できない方は、注射で補充します。
胚移植から9~11日目に、血中HCGの測定で妊娠の有無を判定します。妊娠反応陽性後も、妊娠8~9週までホルモンを補充します。
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副作用
体外受精には、卵巣刺激のためのホルモン剤や採卵時の卵胞穿刺などにより、副作用や何らかの危険が発生する可能性が伴います。当クリニックでは、いかなる問題も発生しないよう細心の注意を払って治療するとともに、万一の場合には適切な対処を行い、早期回復に努めます。
副作用のひとつ「卵巣過剰刺激症候群」について -
妊娠率
体外受精の適応や女性の年齢などにより、妊娠率は大きく異なります。日本産科婦人科学会の統計によると、35歳ぐらいの方の妊娠率は30%弱、出産率は20%ぐらいだと考えられます。年齢が比較的若い方で卵管性不妊症の場合、妊娠率はより高いと考えられます。
複数の胚を凍結し、別の周期で1個ずつ解凍、胚移植することで、一回の採卵による累積妊娠率を上昇させることが可能です。症例によっては、一度の採卵で凍結した複数の胚を、数年をあけて1個ずつ移植し、3人のお子さんを分娩された方もいます。
顕微授精
体外受精は、卵子と精子をひとつの容器に入れ、自然に受精が起きるのを待ちますが、顕微授精は、細いガラス管で一匹の精子を卵の中に注入して受精させる方法です。
高度な乏精子症や精子無力症、受精障害などの場合に適応します。
高度乏精子症や無精子症の男性の中には、染色体の変化や一部遺伝子の欠失を認めることがあり、お子様に同様の変化を認める可能性があります。
費用と助成金について反復着床不全
良好胚を3回以上胚移植しても着床(妊娠)しないことを、反復着床不全(RIF)といいます。原因を調べるために、以下の検査を行います。高年齢や卵巣機能低下により移植できる胚が少ない場合にも、子宮内環境を万全に整えることを目的に検査することも可能です。
- TRIO検査
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以下3つの検査を行います。
- ERA 子宮内膜着床能検査
- EMMA 子宮内膜マイクロバイオーム検査
- ALICE 感染性慢性子宮内膜炎検査
※原則として、ERAは当クリニックを受診されている方のみ対象です。
- Th1/Th2検査
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1型ヘルパーT細胞(Th1細胞)と2型ヘルパーT細胞(Th2細胞)の比を調べることで、免疫療法の適応を検査します。
- 25ヒドロキシビタミンD
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ビタミンDには子宮内膜の着床環境を整える作用があります。血中値を測定してサプリメントで補います。
- TORIO検査(ERA、EMMA、ALICE)165,000円
- EMMA、ALICE72,000円
- Th1/Th2検査11,500円
- 25ヒドロキシビタミンD7,200円